気まぐれなんでも日記

役には立たないけど誰かと共有したい好きなことや日々のあれこれ、考えてることを綴ります。

最近読んだ本たちの感想をひたすらゆるく語る【第七弾】

今更ですが、明けましておめでとうございます。今年は珍しく活動的に毎日を過ごしていてなんだかいい年になりそうな気がしています。定期企画のこの読書記録も気づけばもう第七弾。驚きです。



今回取り上げるのは以下の4冊です↓

これを書くにあたって前回のを見返したら第六"段" になっていたのに気づいて慌てて修正しました。タイトル誤字ってたのは恥ずかしすぎる……


▶︎村上春樹(2013)『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)
弟におすすめされて村上春樹さん初読了。最初の一文で惹きつけられてから読み終える最後までずっと同じ温度で心を掴まれていました。ずっと多崎つくるの一人称語りなのにつくる本人はもちろん、登場人物全員の僅かな心の揺れや変化を自然に汲み取ることができる。誰もが内に秘めているであろう感覚をここまで丁寧に繊細に描く技術が凄い。映画を観ているようだった。ひとりひとりの息遣いやオーラがリアルでずっと不思議な読み心地だった。ひとつの事象や経験を多面的にさりげなく見せることで読み手は知らぬ間にいろんな気づきを得る。スーッと物語に沁み込んでいた。読んでいるうちに徐々に心拍数が安定してくる不思議な読書体験だった。



瀬尾まいこ(2007)『卵の緒』(新潮社)
こちらも弟におすすめされたのをきっかけに読んだ一冊。嫌なやつも意地悪な人も出てこない、劇的な展開もないけれどずっと惹きつけられるなにかがあった。いろんな形の愛をいろんな家族を通じて描いていて、こうやって見落とさずに掬い上げてくれる人がいるんだと安心した。特に育生くんとお母さんの関係がとても良くてしみじみしてしまった…… 嘘のない、互いを大事にする言葉がとても響いた。



▶︎ハワード・J・ロス/御松由美子(2021)『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか』(原書房)
小説以外滅多に読まない私ですが、珍しくタイトルが気になって図書館で手に取った一冊。読んでよかった。数多の研究とデータに裏打ちされた事象の数々は本当に驚きの連続でした、、私たちの意思決定にいかにバイアスが影響しているか、わかっているつもりでしたが、それはあくまでも "つもり" に過ぎないことを思い知らされました。
「無意識のうちに黒人と拳銃を結びつける」
「自分と異なる人種のプレーヤーに対して不利な判定をする」 等々、、
「こういうのあるんだろうなー」ってぼんやり思ってたことがデータとして目の前に突きつけられてショッキングでした。自分への戒めを込めて特に印象深かった記述を載せておきます。

脳は、自分の誤りを認めるよりも、自分の意思決定を正当化する方法を探す。(p.117)

歴史に刻まれる有名な人種問題の研究にも、性差別がからんでいた。(p.119)

十代の同性愛者の自殺が、同年代の異性愛者よりも4倍も多いのは、おそらく内在化した否定的な考えが一因になっている。(p.123)

私や私のような人々は当然のように、自分が危険人物に見えるかもしれないなどと心配せずに通りを歩くことができる。これはトレイボン・マーティンや、ほかのアフリカ系アメリカ人、ラティーネクスがけっして望めない特権だ。こうした力と特権を手にしている感覚、または、ないという感覚は、私たちの日々の営みにどのような影響をおよぼすのだろうか?(p.144)

3塁で生まれたのに3塁打を持ったと思い込んでいるようなものである 力と特権を手にしている感覚はまったく意識にのぼらないため、それを手に入れた人は自身の実力でつかんだものと考えてしまうのだ。(p.154)

優位集団に属している人のほとんどは、このようなことは考えない。なぜなら、生存のためには必要ないからだ。(p.155)

これだけ人間の中に存在するバイアスがもたらす影響について列挙してきた作者が「未来について、私個人は非常に楽観視している」と述べていたのが印象的でした。(未来は人間同士の交流や協力関係が今よりもずっと拡がると思うからというのが理由だった)
私がこの本の最も信頼できると思ったポイントは「すべてのバイアスから自由になれることはない、バイアスは人間にとって呼吸するのと同じように自然な機能だ。」と繰り返し述べていたこと。
「バイアスから自分を切り離し、直視し、脳にめぐらされたループにすぎないのだと認識する」
決して簡単ではないけれど、「バイアスの存在に気づくことで人間は自分のふるまいを制御する力を持つことができる」という明るい糸口も同時に提示されていたのがよかった。

付録に載っている求人や面接、人材育成の際に「自分がバイアスに支配されていないか確かめる・バイアスを制御するポイント」が非常に実践的でわかりやすかった。

「この本自体もバイアスの一種では…?」とか考えだしたらキリがないけど、個人的にはとても腑に落ちるポイントが多かったので定期的に読み返したい一冊になりました。



▶︎早瀬耕(2017)『未必のマクベス』(早川書房)
昨年の夏に購入してから9割読み進めたもののそこから期間が空いてしまい、読了を一時断念。冬頃に改めて最初から読み直して、先月やっと読み終えました。とても重厚感に溢れていて読み応えがありながら芸術作品のようでもあった。(本自体も間違いなく芸術作品のひとつではあるけれど、絵画とか芸劇のジャンルが持つ空気があった) 時に無茶で非合理的な選択をする中井優一になぜか惹かれ続けたのは、彼自身は「他人を疑いきれない、誰もが無垢なものを持っていると信じている人物」だったからだと思う。穏やかで淡々と綴られている文章と内容のギャップが渋くてかっこいい。ほぼずっと中井優一の一人称語りだけど、登場人物たちの心情の変化や機微が静かに伝わってくる。何度も読み返すことで間違いなく深みが増す作品なのでこれからも共に過ごすのが楽しみ。




新年一発目のブログの写真はこれって決めてた。


突然ですが、私の今年の目標は「動く」と「心を殺さない」です。この目標にひたむきに向き合った先に「今年はなんだかいい年になりそう」が確信に変わると思っています。頑張るぞ。